次に向かったのが玉造温泉街。
ここを目指したのは、知りたかったことをこの目で確かめてみたかったからです。
以前から古代の出雲の歴史を調べていて、興味を持った話がありました。
出雲国造は国造が亡くなるとすぐ兄弟なり子供が後を継ぎ、松江市大庭町の神魂神社で就任式を行い、一年間斎戒沐浴して天皇への献上品を持って神賀詞奏上儀礼を読み上げる。
帰ってまた一年斎戒沐浴してから上京し、神賀詞奏上儀礼を行う。(抜粋)
(學生社版 2011年 岡田精司著 「新編 神社の古代史」)
出雲国造(いずものくにのみやつこ)とは、意宇郡を基板に持つ出雲国内でも勢力を持った豪族で、祭祀を司り、国司に協力して政治を行っていた人物。
神賀詞奏上儀礼(かむよごとそうじょうぎれい)というのは、出雲国造が就任の際朝廷で行う儀式で、出雲から大和への服属儀礼とも考えられていたそうです。
「新編 神社の古代史」の中で書かれているこの儀式についての説明 ↓
日本では降伏した人が新たに主人になった人にたいして、あなたの寿命がいつまでも、あなたの治世がいつまでもと祝福することが忠誠を誓う形になる。
この形はずっと後世まであり、民間芸能や民謡にもよく見られますが、一番古い形は出雲の国造の神賀詞です。
に、その様子が分かりやすく説明されています。
出雲の国は、大陸とのつながりが強い場所にあるせいか、国造の力が強く、国造が代わる時には、百人ほどの行列をしたてて、奈良へあいさつに行きました。朝廷では天皇をはじめ、大臣や各省の上級の役人たちが出雲国造を迎える儀式を行いました。
この儀式の詳細については長くなるので省きますが、玉造湯神社の崖の下の畑になっているところが出雲国造が斎戒沐浴したところだったということを知って、機会があればそこに行ってみたいと常々思っていました。
今回やっと希望が叶いました。
無料の駐車場に車を停めて、趣のある橋が何本もかかる温泉街の川の両側の道を歩きました。
古代から玉造の工房で賑わっていただろうこの街には、今やたくさんの旅館やホテルが建ち並び、カフェや雑貨もあります。
天気もよくて観光客も多く、賑やかでした。
川には降りられるようになっていて、川にそって、何カ所か足湯の場所があり、沢山の人が足湯を楽しんでいました。
帰りに足湯に浸かれるかなと横目で眺めながら、目指す玉造湯神社を目指しました。
この一帯は、玉造りに適した石が豊富に産出したことから古代から勾玉や管玉などが造られていた場所で、6世紀頃には10戸あまり50人ほどの人が住んでいたと「こども出雲国風土記」に書かれていました。
玉造湯神社はパンフレットによると
「式内の古社で、貞観十三年(871年)十一月神階従四位したを授く」
とのことでしたが、お社はもっともっと古くから信仰されていたのではないか・・・と思いました。
神社は玉をつくる工房跡周辺に立っていて、そこは低い山というか丘のような地形でした。
拝殿で手を合わせてから周りをうろうろ歩き回りましたが、周りは木々に覆われてそれらしい場所が皆目見当つきません。
「事前によう調べてこにゃあ!」
と夫に怒られつつ、神社の周りをぐるぐる歩きつづけ、仕方なく社務所に戻り、窓口の方にお尋ねすることにしました。
すいません!出雲国造が斎戒沐浴した場所ってどこでしょうか?
「あそこのおすそわけ茶屋の辺りですよ。」
そこから数百メートル先の建物を指さして、すらすらと教えてくださいました。さすが!
ありがとうございます!!
一目散にその茶屋を目指し、辺りをシャーロック・ホームズよろしく丹念に散策しました。
夫と娘は、必死に目を凝らしてスマホ片手にぐるぐる歩き回る私の鬼気迫る様子に呆れ果てていました。
このおすそわけ茶屋という休憩所のような建物のまわりに、石で形作られた池のような場所を見つけましたが、これが遺跡のなのかよく分りませんでした。
建物に隣接して江戸時代に松江藩主が使っていたというお風呂の跡が再現されていました。
要するに、ここはやんごとなきお方が湯浴みをする場所だったんだな・・・と思いました。
感覚を研ぎ澄まして古代に思いを致したかったところですが、長時間の運転と歩きくたびれてくたくた、しかもまた4時間あまりかけてこれから帰らねばというプレッシャーで、心にゆとりがなくあきらめました。
こちらの神さまの雰囲気のようなものを一瞬だけ感じましたが、それは明るく透明感のあるエネルギーでした。
ご祭神は
櫛明玉神
大名持神
櫛明玉神というお名前を目にして、感じた雰囲気にぴったり!と思いました。
辛抱強く待ってくれた夫と娘に感謝しつつ、川べりにあった足湯をしてしばし足の疲れを癒やしました。
次回来た時は地元の資料館にも足を運びたいと思いつつ車中の人となり、やっと帰路についたのでした。
川沿いの道にあったオブジェ
八岐大蛇がまるでキングギドラ
街のすぐそばにある玉造湯神社
神秘的な雰囲気が漂って
拝殿をのぞむ
木々の間を探索しましたが何も分らず・・・
地面がふかふかして不思議な感触でした
境内敷地内で見つけたうねうねの枝
池もそばにあって神秘的な雰囲気でした
おすそわけ茶屋
ここが出雲国造が1年間斎戒沐浴した場所とのこと
昔の1年は今の太陽暦の1年とは違うけど・・・でも長期間の滞在にはなったことでしょう